白鳥鈴奈詩集

オリジナルの詩とショートストーリー・・・生きる喜び。愛の言葉。時の流れるままに

Top Page › ポエム › 「割れた卵」
2012-12-07 (Fri)  10:50

「割れた卵」

「割れた卵」


スーパーのレジで会計をすませ

購入した商品をレジ袋につめようと

かごを載せる台に近づいていった


歩みよると高齢の男性が

レジ袋に買った物を入れていた


私が来るので気が散ったのだろうか

老人の手元がくるい

持っていた卵のパックを

床に落としてしまった


ぐしゃっ

悲しいまでに

卵は形を変えてしまった


似たような経験がよみがえる

パン屋でトレーからパンを落とした時の気持ち

家に帰ったら卵がつぶれていた時の気持ち

喜んで買ったものが壊れていた時の気持ち


こんな経験もある

パンを床に落とした時、お店の人が見て

新しいパンに交換してくれた時のほっとしたことがあった

スーパーでも似たようなことがあった


そうだ!

落とした卵だってお店の人に言えば

新しいのに交換してもらえるかもしれない

声をかけようか!


いつ?



もし私が卵を落としたら・・・

まずはあっ!とびっくりし

あるいはえっ?と突拍子もない驚いた声を上げ

どうしようかと身動きも思考も数秒止まり

そしてやっとどうしようかと思考が動きだし

やがて周囲を見渡し

人の反応を見るか

助けを求めていたに違いない


だがその老人は何も困惑するでもなく

まるで何事もなかったかのように

無残に割れた卵のパックをさっと拾い上げ

あっという間に

他の商品の入った白いレジ袋の中に放り込むと、

すっとその場を立ち去ってしまった


店の人に交換してもらえるように話したら、

老人が喜んでくれるかもしれないと

勝手に想像するのは

余計なお世話だったのだろうか


自己責任の強い人で

割ったのは自分の責任だからと

人に甘えない人だったのだろうか


自分の失敗を人に知れれたくないと

思ったのだろうか


おせっかいで店の人に言うと

困惑していただろうか


こんな考えも

即座に声をかけなかった

私自身への言いわけなのだろうか


出口をでていく老人の姿を

なんともすっきりしない気持ちで

眺めていた


卵を落とした時の

がっかしたであろう気持ちだけが

しばらく私の心に

まとわりついていた














最終更新日 : 2015-08-04

Comment







管理者にだけ表示を許可